神田将ブログ yksonic life神田将の音楽生活や日々のメッセージを綴るブログです。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE |
第5回 電子オルガンの為の作品公募 本選 [110211] レポート 22:35
長い一日でした。雪の降る東京で開催された「第5回 電子オルガンの為の作品公募 本選」は、華やかなコンサートとは違い、選考会ならではの厳かな雰囲気が漂い、私にとって、かつてない緊張と違和感の中での演奏となりました。

私が演奏を担当したのは、久保葵さん作曲の「Rremembrance」。若い感性ならではの美しい叙情や、生きる力のようなエネルギーを感じさせる力作です。

久保さんは今回の本選で奨励賞を受賞しました。きっとこれから先に進む上でひとつの自信になることでしょう。

 
エレクトーンの世界では、編曲やデータ作成を含めた演奏準備を、演奏者自身が行うのが通例になっていますが、自作自演がよいとされる傾向も、他の楽器に比べると格段に高いようです。

自分で作ったものを自分で演奏すれば、作曲の意図やイメージを最大限に発揮できることでしょう。その一方で、作品はいつまで経ってもその作者の手から離れることがなく、広く一般に親しまれるようになったケースは極めて稀です。

この作品公募では、あえて作曲者と演奏者を「分業」にすることで、エレクトーンのための作品が、エレクトーン愛好家の皆さんに広く親まれるためのきっかけ作りになればとの思いもあると聞きました。

また、作曲家が作品に込めたものが、別の演奏家の手によって丁寧に解釈され、命が吹き込まれることで、作曲家自身にも新しい発見がもたらされるはずです。

数日前のブログでも触れましたが、私はこの作品を演奏するに当たり、作曲家の人物像やキャリアについてのリアルな詮索は避け、あくまで預かった手書きの楽譜から得られるものだけを頼りにしました。

こう言っては久保さんに失礼かもしれませんが、作曲家としての経験が浅いことは譜面を見ればすぐにわかります。ベテラン作曲家の作品は、一音ごとの存在感が違います。小説やエッセイに例えるとわかりやすいかもしれませんね。

久保さんの作品は、おそらくご自身が演奏することを前提に書いたものだと思いますので、「演奏家を操って自分の思いを代理表現させよう」という意図があいまいでした。

その点、昨年のリサイタルで初演した石田匡志先生の「幕末」は、譜が私に強烈に語るので、譜面を頂いてから演奏までに、悩んだり考え込むことはひとつもありませんでした。

今回、私はとことん悩みました。何が伝えたいのか。なぜこのように弾かなければならないのか。いくら弾いても見えてこないのです。

更に困ったことに、極めて高度な演奏技術を要求する作品で、年寄りには正直きついという感じでした。ぎっくり腰のおっさんが両足奏法でバタバタと弾くのは、痛々しい限りです。

こんなに暴れて、足腰立たなくなっても、労災はありませんしね。ほどほどに弾くという手もありますが、それでは久保さんにも、この会に対しても失礼です。

私は普段から曲の仕上げは早い方ですが、この曲には4日も費やしました。期間は4日でも、かなり密度濃く接していたので、次第に作品に惚れ込んで来て、今朝ほどからやっと弾くのが楽しくなり、雲に隠れていた作者の精神性も、だんだんと晴れて来ました。

そしてリハーサルのために会場入りした際、初めて作曲者の久保さんと対面しました。想像通り、若くてチャーミングな女性でした。やはりエレクトーン演奏にも力を注いでおり、演奏のコンクールへのチャレンジも視野に入れているとか。穏やかなルックスとは対照的です。

まずは久保さんに演奏を聞いてもらいました。私にとって、それが一番のハードルです。他の人にどう思われようと構いませんが、久保さんのイメージに反するのは本意ではありません。

久保さんは、他人が演奏する自分の作品を聞くのも、今回が初めてだそうです。そこから感じるものは、とても新鮮だったと思います。

私はすっかり気が楽になりました。あとは本番までもう少し時間がありますので、完成度上げる稽古を続けます。

演奏順は作曲者たちがくじ引きをして決めました。「久保さん、1番を引いて!」と念じていたら、本当に1番が当たりました。トップバッターをいやがる人もいますが、何番目に弾いたって自分にとっては1曲目ですから、早い方がシャキッとしていいのです。

それにしても、会場は異様な雰囲気。私はこういう環境には慣れていません。というより、考えてみれば初めての経験かもしれません。ワクワク感もなく、淡々と事が運んでいく・・・

ああ、この雰囲気じゃ調子出ません・・・緊張とは無縁の私ですが、手の震えが止まりませんでした。演奏は傷だらけですし、操作は間違えるし。久保さんには本当に申し訳ないと思いました。

それなのに、久保さんは「神田さんに弾いてもらってよかった」と言ってくれました。

こうした新作を一般のコンサートで演奏する機会はなかなかありません。一回聞いただけではよさが理解してもらえないこともありますし、やはりよく知られた曲が好まれるのが一般コンサートなのです。

でも、せっかく縁あってこうした作品と触れあったのですから、また演奏する機会を持ちたいと思います。そうすることで、私も作品も共にもまれて成長していくのですから。
| コンサートレポート | comments(10) | trackbacks(0) | posted by 神田将 (かんだゆき)
Comment








おめでとうございます。奨励賞は、きっと神田さんに贈られたものだと思います。
以前、生徒向けコンサートで、電子オルガンは一般名詞で、エレクトーンは固有名詞だから、大学での学科専攻名には電子オルガンって言わなくちゃならないんだよ、という話を聞いたことがあります。いくらエレクトーンシティーが会場でも、作曲者はステージアで作曲しているとは限りません。万が一、作曲者がH社のチャーチオルガンを想定していたら、ステージア上でそのチャーチオルガンを再現しなければならないのです。ステージアにはこんな凄いバーチャル楽器が備わっているのに、と憤慨したとしても、この間だけはステージアをH社トーンホイールサウンドだと思い込むこと。
たとえば神田さんの彼女が、昔のレバー式エレクトーンの四段鍵盤(ブログではGX-1)を弾きこなしていて、かつての彼女にその曲をステージアで再演するとしたら、その彼女の中にステージアのイメージがなければ、きっと昔の完コピーを期待されるかもしれません。私も、大昔発表会で聞いたお姉ちゃんたちの曲を、50周年曲集で再現しようとした時、ステージア上のレジストに大きな違和感を感じていましたが、練習を聞いた人にどうしてそんな音の出るステージアを弾き続けるの?と疑問に思われてしまいました。その方のエレクトーンはD型が最高だと思っているそうです。仕方なく、発表会では、オルガンフルートでほとんどのレジストを作って演奏しました。一応ステージアを弾くことに納得はしてもらえましたが…
最近のブログを読ませていただきましたが、この作品に全身全霊を傾けられていたことに驚愕し、敬服いたしました。てるさんの解説も参考になりましたよ。私も即興や課題曲に取り組む時の姿勢として、この内容を身に着けたいと感じました。
取り留めない内容になったので、ついで。昔は音楽専門校の先生は、鬼教授ばっかりだと思っていたので、勉強も苦手な私は、音楽を専門にすることはありませんでした。レスナーになるため、音楽学校の一部科目を履修してみましたが、確かに初対面は鬼教授でしたが?、何とか単位を取ることができました。今の音楽学校の先生は、てるさんのような毒舌かつ温かい先生ばかりになったと思いました。来年度お世話になるかは本業との兼ね合いですが、きっとてるさんのような先生に当たりますよね。
長々と書き続けましたが、明石までに甘くない方のはに〜の仕事をしなくっちゃΓ|・.・|¬
posted by Jeugia Cross | 2011/02/11 11:46 PM |
「神田さんに弾いてもらってよかった!」

一番うれしいお言葉ですね(^-^♪なんだか私まで「よかった〜!」ってうれしくなりました。
必死に頑張っていらっしゃったのですから・・・将さまに演奏して頂けるなんてとても幸せ('-^)だと思います。
お疲れさまでした♪

元気玉届くかな?
山口(雪)→東京(雪?)が心配ちゃね〜(^^;)
posted by 典子 | 2011/02/12 5:43 PM |
将さまへ。。。。。。。。

きついのに良く頑張りましたね。(パチパチパチ!!)

でも・・。ごく最近「中年」というお言葉を2回おしゃいいました。今日は「年寄り」と申されています。
医者曰く・・そういう言葉を発すると、本当に身体が年寄りになっていくそうなぁ〜〜〜。

将さまは、まだ○○歳これからが世間では「働き盛り」といいますでしょっ。。。
「年寄り」の言葉も私、禁句にします!

でも・・・おっさんは、可愛い言い方ですね。その言い方好きです。。。。。。

将さまが年寄りと発したら、私はご高齢の気分になりますっ。(本当ですっ!)

コンサートの日から、将さま「飛行機」飛ぶと良いな〜〜〜って願っています。「翼よあれが岡山だ〜!」
私・・「翼」になりたい。

・・私は今日は、セラピューティック・トレーナーさんのところで「リハビリ」でした〜〜。(身体のはりかえしでだる〜いけど2〜3日すれば元気になります!)

お身体を大切に〜〜〜!!!

(だるさよ!飛んで行け〜〜!)パリジェンヌ。
posted by 真理子 | 2011/02/12 7:30 PM |
Jeugia Cross
私は穏やかで心やさしい一人の先生にしかついたことないので、鬼教授というのが想像できません。なので私も熱を込めてレッスンすることはあっても、叱ることはありません。

典子さん
幸せなのはむしろ私の方です。新しい作品との出会いは、新しい誰かと出会うのと同じ歓びですから。

真理子さん
私もそろそろある種の貫禄が欲しい「お年ごろ」・・・そういう意味での高齢者宣言です。

posted by 神田将 | 2011/02/12 11:54 PM |

「解った!!」

(よっししゃ〜。)パリジェンヌ。
posted by 真理子 | 2011/02/13 12:54 AM |


ちなみに、下記でブログの解析して遊ぶサイトがあり、その結果、私のブログ年齢は52のおっさん副生徒会長でした。

むきゃ〜〜〜〜〜!!ヾ(。`Д´。)ノ
実年齢そこまでいってないし!
せめておばちゃんにしてくれよ!
全くでもって余談ですが(すみませんorz)、
こちらでもって、先にここのURLを入力して判断を見ることも出来ますが、やめときます...
ブログをお持ちの方はお試しあれ。

「ブログ通信簿」
http://blogreport.labs.goo.ne.jp/tushinbo.rb
posted by てる | 2011/02/13 1:22 PM |
将さま。

今度から「中年」と「年寄り」発言を「おっさん」へと替えましょ。

やっぱし、「中年」と「年寄り」は禁句用語に設定しましょ。

(将さまのお言葉と連動しちゃう)パリジェンヌ。
posted by 真理子 | 2011/02/13 7:34 PM |
てるさん
私には恐ろしくてチャレンジする勇気が持てません。

真理子さん
気にしない、気にしない。

Jeugia Crossさん
上のコメントで敬称が抜けておりました。大変失礼いたしました。
posted by 神田将 | 2011/02/13 9:09 PM |
一番先のコメント、確かに至らない面がありました。「憧れのエレクトーン上手なお姉ちゃん」としとけば良いものを。
単なる戯言のコメントですが、ここまで真摯な対応をしてもらえると、バーチャルではありますが、スペシャルレッスンの生徒になったような気がしました。
是非、明石でも、この日のような、楽譜に体当たりで音楽表現に挑むリサイタルを見たいと思います。それに耐えられる練習を積んで、明石で再会できますように。

追伸:敬称なしは慣れっこです。職場で敬称を付ける人はいません。それくらい反抗するし、失敗するからです。
posted by Jeugia Cross | 2011/02/13 10:30 PM |
Jeugia Crossさん
職場で敬称がないのは、親しみと信頼のあらわれのようにお察ししました。反抗と失敗は音楽には必需品です。それを知らない「天然の天才」の方が、実は脆いものです。
posted by 神田将 | 2011/02/14 7:06 PM |
Trackback
この記事のトラックバックURL: http://blog.yksonic.com/trackback/117074
<< NEW | TOP | OLD>>